司法医学による腐敗速度その他


*腐敗の進行
  
  ・水中の場合・・・腐敗速度は通常の1/2
  
  ・土の中の場合・・腐敗速度は通常の1/8  (カスパー)
  
  ・夏と冬では腐敗の進行は全く違う。
  
  ・東京と大阪でも、進行度に大きな違いがある。
  
  ・同じ部屋でも、日当たりのよい場所と悪い場所とで、かなりの差が生じる。
  
  ・太った人とやせた人とでも違ってくる。

 #一般的に腐り始めは酸化作用が強く、酸性腐敗となってガスが発生し、死体は土左衛門と言われるように
  膨れ上がる。そのうちに体のたんぱく質が分解して組織が融解し、腐敗液汁が流れ出すと、
  アルカリ性腐敗に変化し、その悪臭は一段と強くなる。

*長時間の死体の保存方法
 『死蝋』…空気を遮断した、湿気のある低温の環境で、長時間死体を保存する
      脂肪が分解して脂肪酸となり、周囲のカルシウムやマグネシウムと結合すれば、石鹸様になる。

  ex.冷たい水の中や湿地中に、長時間死体があった場合、死体は蝋化し、『死蝋』となる。


*死後硬直…一般には、死ぬと神経が麻痺するから、筋肉は弛緩して緊張が取れ、ぐったりする。
      2時間ぐらい経つと体は、化学反応のため徐々に筋肉が収縮硬化し、関節が動かなくなってくる。
      これが死後硬直であり、筋肉内のグリコーゲンの減少、乳酸の増加に伴うアデノシン三燐酸活性の
      低下などが関与し、徐々に筋肉が硬化してくる現象である。

 #スポーツ中の急死のように、筋肉が疲労状態にあると、化学物質が強く早く反応して、
  硬直は死亡直後に出現する。



*死後硬直の進行速度

 ・死後30分〜2時間で硬直し始め9〜12時間で全身が硬直、その後30時間最強の状態が続いた後、
  次第にやわらかくなりおよそ70時間で元の状態に戻る。
 
 ・死体のまわりの温度が35℃ぐらいなら、硬直の進行と柔らかくなるスピードは上がり、
  24〜30時間程度で硬直はとけ始める。
 
 ・死後硬直は、体に腐敗が始まると徐々に緩解していく。一種の化学反応であるから、体格・外気温・
  その他死体の置かれた環境などによって左右され、一定しない。
 
 ・検死の際、死斑や死体の硬直状態を観察して、死亡時間を推定するが、なかなか正確な時間を
  言い当てるのは難しい。




*毒の種類
   
 ・青酸カリ…細胞中の電子伝達系が破壊され、血液中の酸素が使われないまま循環し、死体の血色がよくなる。
       アーモンド臭がする。
  #チオ硫酸ナトリウム…青酸カリの毒性を無効にする解毒剤
 
 ・アコニチン…神経を麻痺させる。致死量は2mg体内で溶け始めると数分で死に至る。
  #トリカブトの根・葉からとれる。
 
 ・テトロドトキシン…致死量0.5〜1mg 青酸カリの1/200
           口から入れば中毒症状の進行が遅く助かる場合が多い。
           直接血液中に注入されると、短時間で神経が麻痺し呼吸不全を起こし死亡する。
 
 ・苛性ソーダ…放置しておくと、空気中の水分を吸って数分で液状化する危険な薬品
        持ち運ぶには、密閉できる容器と乾燥剤が必要。

*死因のいろいろ
 
 ・窒息死…死体の唇と手足の先が紫色に変色し、目の結膜に溢血点がある。
  
 ・焼死体…骨格筋が、温熱の作用で熱凝固して収縮し、熱硬直を起こす。
      手足を曲げる筋肉のほうが、伸ばす筋肉より筋量が多いため関節はすべて半分曲がってしまう。
      その為、焼死体はボクサーのファイティングポーズのような姿となる。
 
 ・溺死……溺れている間に、水とプランクトンが肺の血管から体に吸収され全身を循環する。
      その際、プランクトンは肝臓や腎臓などに引っかかる。
      解剖して、肝や腎などから多くのプランクトンを検出できれば、溺死と診断。
      殺してから水中に死体を捨て、溺死に見せかけようとした場合、肺に水の流入があって、
      一見溺死に見えるが、血液循環は停止しているので、プランクトンが体に吸収されていない。
      臓器内のプランクトンの種類がわかれば、溺れた場所(川・池・海などの一定の地域)を特定できる。


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